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去る10月3日(日)午後1時より第23回五十嵐アート塾・レクチャーシリーズ「太郎吉蔵の昨日・今日・明日」の講演会が行われました。
今回は、講師に太郎吉蔵の改修設計をされた建築家の中村好文氏をお迎えし、当会の副理事長であり蔵の外構設計を担当された斉藤浩二氏とのフリートークを交えた2部構成で進められました。タイトルが示す通り、今回のテーマは、過去・現在をいかに未来へと繋げていくかという内容です。第1部では、中村氏の仕事を通しての過去・現在・未来をスライドを交えて語って頂き、次の部では、太郎吉蔵の使い方を通して今後のA,C,Tの在り方を中心とした話題となりました。
第1部
中村氏のレクチャーでは、まず"昨日"の物件として、10年程前に手掛けた埼玉県春日部市にある養蚕農家、今村家の古民家再生が取り上げられました。
この物件では、古いものと新しいものとを結び付けて、未来へ向う改修の仕方はないか、と考えプランされたそうです。その解説がとても印象的で、まさに過去の記憶を現在に繋げていく、過去の太郎吉蔵を未来へ繋げていくことを連想させるものでした。
次に取り上げられた物件は"現在"。丁度この夏、ニセコ町真狩村で手掛けたパン工房「Boulangereie JIN」です。
その始まりは、施主であるパン職人、神さんからの一通の設計依頼から。それはまるで、一通のラブレターを貰って中村氏がその思いに答えたカタチでした。人に惚れて仕事をするという物件。人を動かすと言うのは、人と人との結びつきが最も大切な要因だとつくづく感じた件でした。
そして"未来"へ向けての話に続きます。2004年に始まった太郎吉蔵改修計画。様々な条件、紆余曲折があって現在にいたった経緯を伺いました。計画当初、蔵と対になる建築のプランがあったという話は、とても興味深いものでした。結局実現はしなかったものの、もしそれが実現していたら今とは違った活動の形になっていたかもしれません。
第2部
第2部では、はじめに斉藤氏よりA,C,T,のスタートのいきさつやこれまでの活動内容の説明がありました。そしてここで、滝川やこの会が抱える問題を聴衆側に提起されます。今回の本題"太郎吉蔵の明日"です。ここからは、聞き手も受け身ではいられない、対話型のレクチャーとなっていきました。(まるでハーバード大学・米 マイケル・サンデル氏の白熱教室のよう)
まず最初にこの件に関して、建築に携った者として中村氏に意見を伺いました。
「この蔵から最初に受けた印象は、"聖なるがらんどう"。手を加え過ぎればこの良さが消えてしまう。是非、蔵が持っている空気感は残していきたいと。しかし、それと対をなす建物が結果的に実現しなかったので、ここだけ(蔵だけ)で勝負するのは難しいのではないだろうか」
「昨年ここで行ったビアガーデンやオープンカフェは市民に好評で『こんな場があったらいいね』という声を随分頂きました」(斉藤氏)
そこで「週末だけのカフェにしては」「暗さを活かしてバーならいいかも」「札幌国際短編映画祭と協賛して短編映画館にしては」・・・等のやり取りがあった後、聴衆者から意見を募りました。
北大建築史の先生で歴史的建造物再生の活動をされている角幸博氏:「何に使うかも大切ですが、次の世代へ受け継いでいくということが大切ですね。低年齢層も楽しいなと思わせることをしないと続いていかない。地域の人たちが何らかの形で関わらないと。例えば、社会科学習の場として使い、この建築を通して滝川の産業や歴史のことを地元の人に語ってもらうというように」
「当初、貸し館として蔵の使い方に厳しい制約をつけたので市民の方達にかなり敬遠されてしまいました。今後少し緩めようと考えています」(斉藤氏)
「ただある程度のクォリティは、絶対保った方がいいですね」(角氏)
そこで九州、福岡県から岩見沢に展覧会開催で来ている國盛さんより「空間にただ椅子があり、セルフサービスの飲み物があるだけで、公園の様な人が連れ立って語れるだけの場所としてはどうでしょうか」との意見。
「特に目的を設定しないという使い方も大切かもしれませんね」(斉藤氏)
ニセコ町ヒラフで観光業をしている田中氏からは「どの地域も理想と現実のギャップという問題を抱えていますね。商業施設として使うのか、活動の場として使うのか、アート活動をするのか?日本全国で皆さん様々な活動をしていますが、なかなか足を運んでもらえないと悩んでいます。ニセコでは、自然を商品として活動をしていこうとしています」
「太郎吉蔵だけで勝負しようとは思っていません。滝川全ての中の太郎吉蔵として考えています。同じ思いで活動している方々と連携することをこれからもっと考えていこうと思っています」(斉藤氏)
東京から滝川市江部乙町に移住してきた高橋氏は「私個人としては、駅前が公園になる商店街構想をとても気に入っています。ただ、はじめはどうしてなかなか実現できないのかと思っていました。しかしこの1年様々な活動を通してその訳を理解してきました。私は丸加高原の丘陵地帯のすばらしさに魅せられて東京から移住してきました。自然景観のすばらしい中で何かできないかと考え活動を続けています」
ここでこのレクチャーに参加するために東京から来られた全国商店街支援センターの梶田氏から一言感想を頂きました。 「1か月程前、東京の交流会で斉藤さんからA,C,T,の活動を伺いました。そこで参加されている方々が錚々たるメンバーでびっくり。それでこの会にとても興味を持ったので、これは是非視察しなければと。でも皆さんが等身大の悩みを抱えて苦労されていると聞き、少し安心しました。だってここで成功されていたら全国の商店街が抱えている答えのひとつが出ているってことですから」
こうした様々な意見が交わされ、聞き手側にも声には出さないものの各々に考えを巡らせた場になりました。ここで斉藤氏が、それでもアートに気持ちを持ちつつ活動をしていきましょう。同じ悩みを抱えている者同士、これをきっかけに感心を寄せてもらい今後も参加してほしいと。そして最後に中村好文氏が好きだと言った言葉を引用し、今回のまとめとしました。
「井上ひさし氏曰く
難しいこと、やさしく。
やさしいこと、深く
深いこと、楽しく。
楽しいこと、真面目に。
ということを基本姿勢で行きましょう」
この後、その場で改めて懇親会の場となり、各々の更なる交流が行われた。残念ながら思いの外、皆さんの交流が活発でお料理より先に飲み物が無くなってしまい19時をもってお開きとなりました。
人は、往々にして劇的な効果を期待しがちです。しかし必ずしもその効果が、目に見えてはっきりしたものとは限りません。A,C,T,のそれは、あたかもカンフル剤の様な速効性のある薬ではなく、継続することにより体質改善していく漢方薬の様なものなのかもしれません。もちろん、"滝川を元気にする"という本題は外せません。しかし、目に見えない効果も大切なのではないでしょうか。それは例えば"誇り"です。目には見えづらいけれども、文化を軸においた活動で培われていくものも確かにあるように思います。重要なことは、答えを見つけるために考え続けること。継続していくことではないでしょうか。
レポート:千葉 淑子
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