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空知炭坑遺産ツアー レポート:藤岡比左志(ダイヤモンド・ビッグ社専務取締役)
Photo by Naoki Takahashi Photo by Yukitoshi Maekawa

 目の前に横たわる小高い山は、どう見ても自然の山、昔からあった山としか思えない。さまざまな樹木が生い茂り、麓の広場から頂上まで、濃淡の異なる多彩な緑に覆われている。人影もなく、ひっそりとしている。
 ここは北海道赤平市。駅の真裏にある公園のような広場だ。広場から山の上までは土の階段が続いている。通称「ズリ山階段」。そう、われわれが見ているこの山は、選炭したあとの廃石や質の悪い石炭の捨て場であったかつてのズリ山(九州ではボタ山)の現在の姿なのである。この山の下がすべて廃石や石炭とは、まったく信じられない。
 そのズリ山の脇には、朽ちたコンクリートの廃墟が残っている。赤平赤間選炭場跡だ。内部は泥と雑草だけ。遠くない昔に、この場所で多くの人々が働いていたとは想像することも難しい。まさに夢の跡だ。このまま放置しておけば、何年か後には、背後のズリ山のように樹木に覆い隠されてしまうかもしれない。自然の復元力もまた偉大なものがある。
 案内をしてくれたACT運営委員の高橋尚基さんによれば、数年前まではもう少し施設が残っていたという。いま炭坑らしさを忍ばれるのは、この選炭場跡とその100メートルほど先にある高さ約40メートルの立坑櫓くらいだ。立坑櫓は住友赤平炭坑のもので、立坑の深さは600メートルに及び、昭和38年の完成当時は東洋一の立坑と言われたという。だが、それも今は夢か幻か。夏の風と光の中で、静かにそびえているだけである。
 炭坑の遺跡が自然に還っていくように、人間も一瞬の時代を生き、一瞬の記憶を残すだけでまたどこかへ還っていく。炭坑の遺跡を見ていると、そこに生きた人々を思い、懐かしいような、切ないような気持ちから離れることはできない。